私が英語の勉強を始めたばかりの頃、一人の外国人との出会いがありました。
ある日、髭を生やした白人男性が原付バイクに乗って私の前に現れ、笑顔でこう声をかけてきたのです。
“Hello! What do you do?”
それが、チェコ人の友人・ヤンとの最初の出会いでした
当時、私は家具の図面を描く仕事をしていました。そのことを話すと、彼はとても興味を持ったようで、「どこに住んでいるの?」「どんな仕事をしているの?」と次々に質問してきました。
話をするうちに、彼はチェコ共和国出身で、日本人の奥さんと子どもたちと一緒に日本で暮らしていることを知りました。
その後、私は彼の大きな挑戦を目の当たりにすることになります。
彼は売りに出されていた古い中古住宅を購入し、たった一人で家全体をリノベーション(Renovation)し始めたのです。
内装だけではありません。外装も含め、家のほぼすべてを自分の手で作り直していきました。
チェコでは建築関係の仕事をしていた経験があり、その知識と技術を存分に生かしていました。

さらに驚いたのは、ヨーロッパから船便のコンテナいっぱいに建築資材や工具、機械を日本まで運んできたことです。
古びていた住宅は、年月をかけて少しずつ姿を変え、まるで別の家のように生まれ変わっていきました。
玄関ドアや窓はチェコから運んできたものを使用し、室内の壁にはチェコ製の美しいタイルが随所に貼られています。
和室だった部屋はフローリングの洋室へと変わり、冬になるとリビングでは薪ストーブに火が入り、家全体がやさしい暖かさに包まれます。

「階段は螺旋階段にしたい。」
そんな彼の希望を聞き、私は螺旋階段の図面を描くお手伝いをしました。自分の仕事が、彼の夢の家づくりの一部になれたことは、とても嬉しい思い出です。
そして数年という長い歳月をかけて取り組んできた彼の情熱あふれるリノベーションは、つい最近、ついに完成しました。
初めて出会った日の「Hello! What do you do?」という何気ない一言から始まったご縁。
英語を学び始めたことで出会えた友人、そして一人の職人としての情熱を持つ彼の姿は、今でも私に大きな刺激を与え続けています。
